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驚いたような、戸惑ったような困惑の声が届いたのはキスを贈り数十秒後のこと。
「ス、コー…ル……?」
閉じていた瞼を震わせ目を見張る彼女に、口端を上げながら答える。
「ごめん、仕事は嘘なんだ」
嘘ついてごめん、と更に謝罪を加え、後ろ手に隠していた大きな包みを差し出した。
「これ……?」
上半身を起き上がらせ、不思議そうに包みを見つめるリノア。
スコールは彼女の腕に包みを持たせ、空いた自身の両腕で柔らかな体を抱き締めた。
「誕生日、おめでとう」
「……!」
は、と息を呑む音が耳元で鳴る。
「何が良いかわからなくて…色々考えて、それにした」
リノアはそれと言われたプレゼントを抱えなおし、スコールを見上げた。
「開けて…良い?」
首を傾げる彼女に、綻んだ顔をそむけながら答える。
「ああ」
わかりやすい照れ隠しをする彼に微笑し、丁寧に包みを開放する。
かさ、と軽い音を立てて姿を露にしたのは―――
「…桃だ…」
華やかに、愛らしく己を主張し開くそれ。
薄い桜桃色に彩られた花弁は細い枝に沿って優雅に咲き誇っていた。
短く切られた枝の根元には白いレースのリボンが飾ってある。
「…3月3日の誕生花だと聞いた。リノアに似合うと思って…」
「……うれしー……」
噛み締めるように、柔らかく桃の枝を握る。
「ありがとう…スコール。すっごい嬉しい」
頬を赤らめて満面の笑みを向けられたスコールは、自身の顔もきっとそうなっているであろうことを予想し彼女から視線をそらした。
可愛らしく微笑むリノアに、心が温まるのを感じる。
「産まれてきてくれて…ありがとう」
自然と、口をつついて出てきた想い。
使い古された、けれども真にそう思う、飾り気のない言の葉。
「…うん…わたしも、ありがとう…」
ふふ、と照れくさそうにはにかむ彼女の頬に手を当てる。
どりらともなく、近づく熱い体温。
触れ合った唇から、愛しい想いが溢れ出す。
「―――桃の花言葉、知ってる?」
「…?」
触れ合うだけのやさしい口付けを終えた後、小さくこぼす彼女の言葉に耳を傾ける。
大きな胸板に抱かれながら潰さないように大事に手にする桃の花を見つめながら、リノアは悪戯に笑った。
「花言葉は、『あなたに夢中』」
へへ、としてやったり顔をする彼女に、目を細める。
「…なんだ、そのままだな」
「へ…」
予想外の言葉に目を丸めるリノアの耳元に唇を寄せ、一言。
「俺は、いつだって夢中だ」
誰に、なんて
言わなくても
わかるだろう?
「〜っ…ずるい…!」
顔を真っ赤にして俯く彼女が愛おしすぎて、どうしようもない。
永久にこの腕に閉じ込めておきたいような、強い衝動を受ける。
「おめでとう…リノア」
とりあえずは、祝福の言葉を、何度でも。
貴女だけに、とっておきの愛を紡ごう。
Fin
―――――――
リノ誕!
ハッピーバースデーリノアちゃん!
これからもずっと大好きです(^^
作成 2010/3/3
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