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俺の実習内容はこうだ。
@五年と同様、実習受験者が女装し、ペアに与えられた課題を遂行し次第そのまま帰還する。
ただし、六年である俺の場合は双方女装で、利吉さんが何処かの城の姫という設定。
そのお姫さんを女中に扮した俺が護衛し、忍務内容を遂行してお姫さんを無傷で届ける事。
A教師陣が暗殺者という設定で、先生達が張った罠を掻い潜り、奇襲を交わして逃げ果せる事。
ただし、利吉さんは危険域ギリギリまでは手を出さないというのを前提で、俺の至らなさで逆に利吉さんに守られてしまった時点で失格。
その他、利吉さんが危害を加えられたり、俺の落ち度で利吉さんが自己防衛した時も減点対象となる。
減点対象の方は、細かい事を入れれば幾つかあるんだけど割愛。
兎に角気を配らなくちゃいけない事の多さと、女物の着物は裾捌きが大変で俺自身足がもたついたりして大変だ。
その分利吉さんは慣れたものだけど、姫という設定からか、逃げ足ももたついた芝居を入れてくる。
何なのその余裕!!
俺は守るのも女性として振る舞うのも手一杯で、疑似忍務が終わった頃にはぼろぼろ。
裾は泥が跳ね酷い在り様。

しかし、利吉さんの手を煩わす事なく、一応守り通せた。
一応ね、一応。
もうこの姿からだと大分減点されたんだろうけどさ。
とほほ、と苦笑が零れた。

「まぁ、確かにぼろぼろだけど頑張ったと思うよ。お疲れ様」
そう言って利吉さんが俺の頭をぽんぽんと撫でる。
「…ところで利吉さん、着物、派手じゃありません?」
実は最初からずっと思っていた。
普段の女装時の着物では無く、今日は薄い黄色の地に、白と蜜柑色の菖蒲があしらわれ、茎の緑とほんの一部分に施された薄紫の花が更に引き立って描かれている。帯も赤い。


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