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五年男主短編:■食満■全部伝わってしまえばいい とちょっぴりリンク。未読でも可


どうしようもないって、これは

今日は、五六年合同で町での実習があった。
内容は女装した五年とペアを組み、恋仲の振りをして、町でそれぞれのペアに与えられた課題を遂行し、そのまま帰還するというものだった。
忍務の内容によっては、くノ一と夫婦の振りをして長期間滞在しなければならないものや、男手のみが必要な時は商いをしたり、女装で紛れられるなら恋仲や夫婦に見せ掛けた方が動きやすい為、このような訓練も授業に組まれる。

五年にとっては、合同の課題遂行と女装の二種類の実習を同時にさせられる。
気の配り方や遣い方、所作や課題やらと気を回さなくちゃならない所が多い。
その点六年はその補佐みたいなものだから幾分気は楽…のはずなんだけど、これは一体どういう事だろう。

俺と、学園の生徒でも卒業生でもないのにペアを組んでくれた利吉さんの双方とも女装だというこの事実。

「なかなか…似合うものなんだな、女装」
課題を無事遂行する事が出来た帰路の最中、しみじみと利吉さんが俺を見て呟く。
「利子ちゃんに言われても素直に喜べませんよ!!何でそんなに可愛いんですか!?」
あまりの可愛さに、思わず歯を剥いて抗議めいた言い方になってしまった。
利吉さんは齢十八だというのに!背も伸び、身体もがっしりとし始めているのにだ!
どこか女子とは違う色香を醸し出している利吉さんが、優美な所作で口元を袖で覆って微笑む。
「粗野な物言いをなさらないの。今は女性なのですから」
最初に男言葉で話しかけたのはそっちなのに!と文句を言いそうになるも、グッと呑み込む。
「そうは仰いますけれど、この有様では今更取り繕っても遅いかと…」
まじまじと自分を見下ろし、はぁっと溜息が出た。

そもそも何故俺と利吉さんが女装かと言うと、五六年での合同実習は人数上六年が一人あぶれる。
そこで、戦場実習免除且つ成績ギリギリの俺の為に、先生が特別実習として別内容を用意してくれたのだ。
そして利吉さんは、たまたま山田先生に帰省の催促に来たら巻き込まれたってわけ。


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