06




―――あぁ、なんて馬鹿なんだ俺。

「確かに、想いを否定された事なんて無かった」
「ほらみろ。俺は“嫌だ”なんて、言っていない」
先程と同じ台詞を、もう一度言われる。
「でも、抱きたいって事がばれた時 “お前に俺は抱かせない”って言われたよ?」
「ふざけんな!それとこれとは意味合いが違うだろうが!大体“俺が抱かれる側なのは納得出来ねぇ”って意味で言ったんだ!!」
留三郎がガバッ!!と身を起こす。
その反動で俺は留三郎の上から転がり落ちた。
そして、時が止まったかのような


間。


「えっ?え?どういう事?それって、留が抱く側なら良いって事?」
予想外の言葉に呆けてしまい、歯に衣着せぬ物言いをしてしまった。
茫然とする俺と、同じく自分の言った事に茫然とした表情の留三郎。
「留?」
俺は転げた身を起こし、後ろ手を着いたまま驚き固まっている留三郎の傍に、はいはいをして寄る。
途端に留三郎の顔が、朱を刷(は)いたように染まる。
「…っ、んだよ、これ!何言ってんだよ俺!てめぇの所為だぞ、くそっ…」
混乱に陥った留三郎が膝を抱えるようにして蹲り、額を膝頭に押しつけて唸った。

「ねっ、ねぇ留、実は俺たち、結構前から想いが通じ合ってたって事?」
縮こまる留三郎ごと抱き締める。
ぎゅうぅぅぅぅっと、大事なものを包み込むように優しく、強く。

「…俺が自覚したのは今だっての」
無意識に想い合っていた事を、自身によって突き付けられた留三郎は、感情の整理がつかずギッと俺を睨む。
上げられた顔に、見つめられた衝動に、自然と身体が動いた。

ちゅっ、ちゅぅ

啄むように、何度も口付けた。

「んっ、て…めぇ、ぅあっ、ざけんな…っ、」
悪態を吐きながらも、その身を震わせ応えてくれた。
どさりっ、と、再び留三郎に体重を掛けて組み敷く。
押し倒された留三郎は、不服そうに眉を顰めた。

お構いなしに顔を埋め、ぴちゃり、とその筋張った喉元を舐め上げる。
「はっ!…あっ、」
留三郎はびくびくっと肩を跳ねさせ、何とも悩ましげな声を聴かせてくれた。
「留、可愛い…」
ぞくぞくっと甘美な快感が背筋を這い上がる。
それに呼応するように、もっともっとという欲が膨れ上がり、ずくり、と俺の腰を重くさせる。

「もっと、啼いてよ」
かぷり、と首筋に歯を立てれば
「あっ!」
と、腰を浮かせて快楽を逃がそうと身を捩る。



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