02




ぽかんとした顔が可愛らしくて「ぷっ」と吹き出すと、つられて小松田さんも「ふふふっ」と笑い出した。
「よく分からないけど、頑張って!」
と、激励の平手を背中にくれた。
「あいたッ!くっくっくっ、ありがとう。小松田さん」
気合を入魂してもらった足で留三郎たちの部屋に向かう。

あれ以来、初めて留三郎とは顔を合わせる事になる。
ほんの暫く会わなかっただけだというのに、手には汗が滲み、心音が半端なく打ち付ける。
ドクンドクンと緊張に鼓動を鳴らす心の臓は、そのうち鳴り過ぎて止まんじゃねぇの?なんて馬鹿な事を考えてしまうくらいだ。
正直逃げたい。
だけど、きっと今伝えなければ後悔する。
俺は数日の内には此処を去るのだ。
ならば、打ち明けるのは今しかない。
ふぅっと一つ溜息を吐いて、両頬をパァン!と小気味よく叩く。
「うっし!行くぞ、俺!!」
褌ならぬ袴の紐をきゅっと固く結び直して、伊作と留三郎の居る部屋の前へと立つ。



「伊作、留三郎、邪魔して良いか?」
たすたす、と障子戸を叩く。
「陽か?入れよ」
と、留三郎の返事が返った。

心配していたよりも元気な声で安堵した。
それと同じ量だけ、緊張が競り上がる。

とうとう、この時が来た。



それでも明日は止まらない

(―――後悔なんて、するもんか)





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