04




赦す…
赦す、か。
俺が、俺自身の悔やむ部分を赦し、伝えてみてもいいんじゃないかと背中を押してくれているって事なんだろう。
赦してもいいのかな。
許されるのかな。
でもきっと、この先にはもう伝えられない事なのかもしれない。
けじめをつける気でいたんだし、それならば全部知ってもらいたい。
いつもの様な戯れるような伝え方じゃなくて、ちゃんと真剣に。
留三郎は困るかな。
また悩ませちゃうかな…。

これこそ俺を友だと思ってくれている留三郎に対しても、妻になるかもしれない絹代に対しても裏切りになるのかもしれない。
それでも伊作の言う通り、俺が俺の気持ちを大事にしてあげなくちゃ、行き場を失って何時までもぐずぐずと胸に閊えたままだ。
だったら潔く当たって、ちゃんと、ちゃんと…色んな事と向き合いたい。
もう、後悔ばかりして悩むんじゃなくて。

「…うん。ありがとう、伊作。俺、やっと目の前が見えてきた気がする」
伊作の言葉を咀嚼するように噛み締め、自分なりに呑み込む。
「少し、晴れた顔つきになったね」
「おぅ。伊作が背を押してくれたお陰だ」
「役に立てたなら嬉しいよ」
ふふふっ、と微笑む伊作につられて俺も笑う。
やっと笑う余裕が出てきた。

「俺、留三郎とは夫婦になれないとか、稚児を儲けてやる事が出来ないって思った事があっても、あいつが女だったらだなんて思った事、一度も無いんだ。あの留三郎だから、好いんだ」
「うん」
「ちゃんと伝えて来る。後悔しないように」
そう言って拳を伊作に突き出す。
突き出された拳に、伊作も拳を当てて喝を入れてくれた。

「うん。行っておいで、陽」



愛の痛みを知る人よ

(―――ありがとう、お前に支えられてばかりだ)





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