02




バサリ、と剥いだシーツを頭からかぶり、顔だけを覗かせて隣で太陽の香りのするシーツを敷き整えている鴻を見遣る。
「鴻、Trick or treat!ご馳走をくれないと悪戯するよ?」
僕は即席の真っ白お化けに変装して鴻にお菓子を強請る。
「ふふっ、すみませんお化けさん、今手持ちが無いので帰りにお茶でもしていきませんか?」

僕の子どもっぽい行動に、慈愛の満ちた笑みを浮かべた鴻がそう提案してくれた。
「それは、デートのお誘い?」
僕が意地悪に明確な言葉を求めると「…そうですよ。」と、はにかんだ鴻がひとつ頷いた。
可愛い。堪らなく可愛い。その表情や仕草ひとつにも、僕は愛おしさが込み上げて感じ入る。

「…鴻」
そう名前を呼んで、鴻の腰を引き寄せる。
少し驚いた表情を見せたけれど、抗う事無くそのまま僕の胸中に引き入れられた。


「ねぇ鴻、お菓子はいらないから、このまま僕に悪戯されて…?」


そう鴻の耳朶に唇を寄せて囁くと、ぴくり、と鴻の肩が跳ねた。
それすら愛おしくて、2人シーツに包まる様に、僕は鴻を力いっぱい抱き締めた。



Halloween

(―――Trick or treat!ご馳走をくれないと悪戯するよ?)





[ 17/44 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]