03




素麺を挟んで三対三のいつもの形で飯台に座る。
「…今日はこう座っていると、まるで彦星と織姫の様だな。」
鉢屋が近江を見つめて口を開く。
「えっ?どっち側が彦星で織姫なの?」
尾浜が少し身を乗り出す。
「そりゃぁ…俺たち側が彦星だろうな。」
俺が織姫側だったら興醒めするわ!と、竹谷が身震いして続けた。
「…じゃぁ俺は、お前の織姫になるのか。」
久々知が不服そうに眉間に皺を寄せて、目の前に座る竹谷を見遣った。
「織姫側である事は別に構わないんだ?」
不破が苦笑を浮かべて突っ込みを入れた。
「それもまた、一興だな。」
自分を見つめる鉢屋に、近江は綺麗な弧を描いた口元でそう答えた。

かぁぁぁっと鉢屋の頬が上気した。
(…もっと、はぐらかされると思ったのに)
胸中で呟くも、平常心平常心と己に言い聞かせ、箸を手に取る。
「じゃぁ、食べるとしようか。」
ごほん、とわざとらしく咳払いをした鉢屋が先導した。
「うん、食べよう。」
「腹減ったぁぁぁぁぁ!!」
続いて久々知と竹谷も箸を取る。
「あっ!折角だから、各々この天の川に願いを捧げてから食べない?」
尾浜がはいはーい!と挙手をして提案した。
「良いね、それ!」
わくわくと不破が同意した。
「じゃぁ、手を合わせて祈りと頂きますの号令をしようか。」
近江が両の手の平を合わせて、皆をぐるりと見回した。

「それでは、」
鉢屋が号令を掛ける。
それを合図にそれぞれが瞼を閉じ、胸中でそっと祈りを捧げた。
願わくば、聞き届けられますようにと。

閉じていた瞼を皆が開けた事を確認すると「続いて、頂きます!」と、食堂のおばちゃんに聞こえるようにと挨拶をした。
「「「「「頂きます!!」」」」」
残りの五年生の声も高々と響いた。



天空に祈りを捧げて

((((((―――どうかずっと、この仲間と居られますように))))))





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