02




「大丈夫、ならばきっとすぐ近くに居るだろう。俺達だけで探そう。」
にこりと柔らかく先輩が微笑んだ。
「は・・・い。」
僕はその笑顔を直視出来ずに、目を伏せる。
(とても好きな、表情。)
熱の集まる顔を悟られたくなくて、再び地に這った。

「ジュンコ〜、ジュンコどこだ〜?」
僕と先輩は草むらを掻き分けて探す。
「あっ!居た!なんだ、やっぱり近くに居たんだな。」
先輩が安堵の笑みを零した。
ジュンコはシュルシュルと抱き上げた先輩の腕を伝いその首に緩く、けれどしっかりと巻きついて先輩の頬に頭を摺り寄せた。

「・・・浮気者。」

それを見ていた僕は、思わず笑みを零して呟いた。
「ん?何か言ったか孫兵?って、珍しいな、お前がそんなに笑うなんて。」
くすくすと笑う僕を見て、先輩は一等優しい眼差しを向けてくれた。

(ごめんなさい先輩。ジュンコが本当は先輩の気を引きたくて、姿を見た瞬間に逃げたの、僕知っているんです。)
「羨ましいなって、思いまして。」
未だにくすくすと笑いながらそう言う僕を、再び先輩は優しい手つきで僕の頭を撫でてくれた。
「うん?孫兵は本当にジュンコが好きなんだな。」
ははっ、と先輩は笑うとジュンコを僕へと渡してくれた。
先輩は、ジュンコに頬摺りされていることを羨ましがったのだと勘違いしたらしい。

違いますよ、近江先輩。
僕が羨ましいと言ったのは、先輩に触れられるジュンコに、です。



共犯だって、知らないで

(―――お気付きではないのでしょう?僕たちが共犯者だって。)





[ 23/44 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]