03
「なぁ鴻、私と口付けしてみるか?」
立花が艶美な笑みを浮かべて近江の頬を撫ぜる。
「…立花先輩、俺、こう見えても身持ち堅い方なんですよ?」
その愛撫を受け入れながら近江が苦笑を零す。
「知っている。それは私も同じだ。」
そう言って、立花が互いの間にある距離を詰める。
「ふふっ、存じ上げておりますよ。だから…」
と言葉を続ける。
「これが立花先輩のお戯れだと言う事も、重々承知しております。」
そうあだっぽく笑う近江に「くくっ」と立花が笑い出した。
「本当に食わせ者だな、お前は。」
紅にさえ、嫉妬を覚ゆ
(―――この私が欺かれるとは。)
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