04




「あっ、居た。」
そう言うが早いか鉢屋が席を立つ。
話題の中心である鴻は店頭の販売菓子を眺めていた。

「どうしたんだぁ〜?鴻」
「いきなり居なくなったら吃驚するじゃないか。」
鉢屋に続いて八や兵助もやってきた。
「何か珍しいものでもあった?」
雷蔵がにこりと微笑み尋ねる。
「笹団子、そんなに買うの?」
鴻の手元を覗き込んで、俺は目をぱちくりさせる。

「勝手に席を立って悪い。これ、委員会の皆にお土産として買って行こうかと思ってさ。」
鴻がへらりと笑った。まったく、委員会の後輩の事になると締りが無くなるんだから…。
思わず俺は苦笑を浮かべた。

「なら私も!」
鉢屋の目がキラキラし出した。こいつも後輩にすこぶる甘いんだよね〜。
「俺も買って行ってやるかな〜」
八もニカッと笑う。
「俺も。」「僕はどれ買って行こうかな〜」
兵助と雷蔵も真剣な眼差しでお菓子を物色し始めた。

後輩にべたべたに甘い俺らは、食べる事よりも買って行く事に趣旨が変わり、どれにしようか悩み始めた。
だけどその表情はほわほわと温かく、茶屋の甘い香りにも負けない甘い顔した男達が、後輩を思って菓子選びに没頭する。



ふわふわあまい

(―――かく言う俺も、買っちゃうんだなぁ)





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