03




「兵助にも合うと思うよ?お前の肌には紅が好く映える。」
口元に綺麗な弧を描いて褒める近江に、久々知は顔に熱が集まるのを感じた。
「そ…そうかな。俺も買って行こう。」
と、紅を見る振りして顔を隠した。
(顔が、熱い…。)
その様子に近江が気付く事もなく、それぞれが買い物を終えて行った。










「さ〜て、何にしようかな〜!」
わくわくと喜びを隠しきれない様子でお品書きに目を通す八左ヱ門。
俺たちはあの後順調に買い物が終わり、一息着こうと茶屋に入った。
行きの道すがら口にしていた願いが叶ってご満悦の様子の八。
皆も甘いものは好きだから異議無く案内された席へ続いた。
「勘ちゃん、何にする?」
八左ヱ門の様子を見て笑っていた俺に雷蔵が問う。
「俺は羊羹にしようかな。」
そう答えれば「俺は団子!!」と八が元気に続き「俺は杏仁豆腐」「私はわらび餅」と、兵助と鉢屋も続いた。
「わらび餅も良いね。あっ、でも僕はあんみつにしようかな。でもやっぱりわらび餅が良いかな〜」
うんうんと雷蔵が悩みだした。
「じゃぁ私と半分こにしよう?」
そう鉢屋が助け舟を出せば「うん!」と極上のふわふわな笑顔を見せる。

“癒されるな〜”

と、その場の全員が思い空気が和んだ。

「鴻は何にするの?」
そう言って鴻を見遣れば、今さっきまで居た筈の姿が忽然と無くなっていた。
「あれ?」
ぐるりと店内を見回す俺に気付き、他の面子も「あれ?鴻は?」と周りを見回した。



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