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貴方に縋って、声を嗄らせて

すーはー、すーはー、と数回障子の前で深呼吸をする。
今夜私は、色の実習課題遂行の為、お相手して下さる五年は組近江鴻先輩の自室の前へとやって来ていた。

「ははっ、そんな緊張しなくても…というのは無理な話だよな。ともあれ入っておいでよ。」
突如中から近江先輩の声がする。
緊張のあまり気配だだ漏れだったし、深呼吸なんかしてたら分かっちゃいますよね!?
あぁ〜私の馬鹿ぁ!恥ずかしい!どどど…どうしよう!!

緊張が頂点に達し、そのまま固まったように立ち尽くしているとスッと障子が開けられた。
現れたのは夜着姿の近江先輩。普段高い位置で一つに括っている髪も、今は下で緩く纏められていた。

あぁ、何て綺麗な人なんだろうとしみじみ思う。
今まで接点なんてなかなか無かったし、委員会も違う。運が良ければ共同渡り廊下や食堂、図書室で一緒になれるか、ご友人たちと談笑している姿を見掛ける程度。
他のくノたま達みたいに話しかける勇気なんて無いから、こういう異年齢合同実習に一縷の望みをかけるくらいが関の山だった。
そんな中、これは仏様の思し召しだと思うしかない!と拝みたくなるような千載一遇の機会!!遠くで見詰めるしかできなかった近江先輩と閨を共に出来るなんて!!しかも優しくて当たった人が羨ましいと言われるくらいの好評のお方!!

本人を目の前に舞い上がってぐるぐるしていると、くすくすと再び笑われた。
「そこに居るのもなんだから、入っておいで?障子を閉めた途端襲ったりしないから安心してよ。」
と、からかうように招き入れられた。
「し…失礼します!!」
言われた言葉に茹で上がる程赤面し、カチンコチンに硬い声を出してしまった。
「どうぞ。」


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