02




「…僕、正にその共闘に巻き込まれて“初めて”持ってかれちゃった…。」

この話題になってから今の今までだんまりだった不破が小さく手を挙げ、どこか遠くを見るような眼差しで呟いた。
「それはまた…」
「大変だったな…」
ぽん、と言葉と共に近江と久々知の手が不破の肩に掛かる。

「共闘って、どんな感じだったんだ…?」
ごくりと息を呑んで問う鉢屋につられ、他の面子も不破を見る。

「…委員会に向かう途中の共同渡り廊下で、六年と五年の先輩たち計三人が前と後ろから来て“ちょっといいかな?”って有無を言わせず腕を引かれて。驚いていたら左右の肩を一人ずつに抑えられて…うば…奪って行かれちゃった…。」
力なく苦笑を浮かべる不破が言葉を続ける。
「すごい早業だったんだよ〜。僕が目を白黒させているうちに抑える人物が入れ替わって、続けて三人に接吻されちゃった。」
はぁと溜息をついて俯く。

「それって得したのか損したのか複雑だな…。」
話に圧倒された竹谷が、ぽかんとした顔で呟く。
「なんか…むしゃむしゃと食べられそうな錯覚起こしそう…」
久々知が眉間に皺を寄せて唸る。
「恐かった…よね〜」
眉毛を八の字に下げ、同情的な笑みを浮かべる尾浜。
「うん。食べられちゃうかと思った。おまけに、“実習だったの、ごめんね!後で先生が確認に回ってくるから証言宜しく”って、先輩自身の名前が書かれた札を押しつけられて行っちゃった。」
嵐の様に表れて、津波の様に唇掻っ攫って、暴風の様に去って行ったであろう先輩たちを思い浮かべて全員が身震いした。

「かく言う八はどうだったんだ?」
鉢屋が言い出しっぺを振り返る。
「俺は!残念ながら“初めて”の時が初めてだったので、二重の初体験だった!」
はは〜ん、と開き直るように仁王立ちになって高らかに答える。
「…お前がそんな態度で言うから、言い出しづらくなったじゃないか。…俺も同じだよ。」
そう久々知がバツが悪そうに続く。



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