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きみという付加価値

「じゃぁさ、じゃぁさ。“初めての口付け”ってどうだった?」
すっかり話題にのめり込んだ竹谷が質問を続ける。

「俺は“初めて”の子とその時に。」
案外あっさりと答える尾浜。
「両方とも、ちゃんと好き合ってる奴と出来たのか〜羨ましすぎるぞ勘!!」
「何それ、八つ当たりは止めてよ〜」
迫る竹谷と、それを押しのける尾浜。
じゃれあう二人を横目に
「私は閨の実習が始まるだいぶ前にあった“男子と口付けをする事”っていう実習の時に頼まれて。」
と鉢屋が答える。
「あ〜、あったな、そういう実習。」
竹谷が過去の記憶を手繰り寄せるように天井を仰ぎ見た。
「あれ、俺達男子側には一切知らされないから驚いたよな。不自然なまでに接触が多かったり唇が近付く様な体制に持っていかれそうになったり。流石におかしいから警戒したけど。」
そう続ける近江に
「それはお前が狙われまくったからだろ!」
「色男は大変だね〜」
と歯を向く竹谷とカラカラと可笑しそうに揶揄する尾浜。
「結局奪われたの?」
と問う久々知に、近江はふるふると首を横に振る。
「いや、胡散臭かったから全部かわした。無事です、俺の唇。」
と、とぼけた様に唇に人差し指を当てて片目を瞑った。

「あの時はくノたまが課題遂行に血走ってたからな〜流石にちょっと恐かったよね。」
思い出して苦笑する尾浜。
「知らされないだけならまだしも、相手自由で強請るのでも奪うのでも可だったもんな。」
「その上人選が被っても可。というのだけに留まらず、あまつさえ共闘も許されていたらしいな。」
「恐ぇぇぇッ!」
鉢屋と久々知が続けば、竹谷が身を竦めた。


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