05




「残るは鴻!お前はどうなんだ?」
竹谷が大取りだとでも言うように近江にずずいっと近づく。
「あ〜ぁ、俺?」
歯切れ悪く苦笑を浮かべる。
「俺は出が出だからなぁ。」
と、後ろ首を掻く。

「俺が廓出なのは話した事あったろ?」
近江は皆の顔を順繰りに流し見る。
「おぅ。そうだったな。」
思い出したように同意する竹谷。
「だから、そん時。遊女さんに奪われました〜」
と、情けないような照れたような笑顔を浮かべて近江が答えた。

「うぉ〜〜〜羨ましい!!」
「別嬪相手なんて良いなぁ。」
「…格好良い。」
「うわ〜、大人だなぁ〜。」
口々に竹谷・尾浜・久々知・不破が零す。
ただ鉢屋だけはむっつりとした顔をした。
そんな皆の様子を眺めて、近江は胸中で苦笑を浮かべていた。



原価零の愛

(勘はともかく、案外上手くいかないもんなんだな、“初めて”の相手って。)





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