03




「え?何が?初めてが?今回の実習が?」
何でもない事のように、普段と変わらず尾浜がへらりと笑う。
「勘ちゃんってこういう話題の時でも普段と変わらないからピンと来ないよね。無欲そう。」
と、不破が竹谷と一緒に尾浜の顔を覗く。
「いやいやいや!こういう奴ほどねちっこかったり凄かったりするんだって!」
鉢屋がいやらしい笑みを浮かべて反論する。
「…鉢屋、覚えておいでね?」
にっこりと微笑む尾浜から仄黒い気が放たれる。
「恐い怖いこわい!!」
ひゃ〜と鉢屋と竹谷が抱き合って、恐れる素振りをする。

「無欲そうと言えば、兵助は淡白そうだよね、こういうの。」
尾浜が零した一言で矛先が久々知へと変わる。
「えっ?」
いきなり話題を振られた久々知が瞳を瞬かせた。
「あ〜、それなんか分かる。激しくなんのは豆腐相手だけだもんな!」
カッカッカッと竹谷が大口を開けて笑う。
「…それ凄い誤解を生む言い方だな。」
呆れたように近江が口を挟む。
「そう言う八は必死で激しいんだろ?」
にやにや顔の鉢屋が言葉を重ねる。
「ばっか!!うっせーよ!…まぁ、確かに勝手分からず必死で頑張ったのは事実だけどな。」
真っ赤になって憤慨しながらも認める竹谷。
「俺だって勝手分からなかったから必死だったよ。…おかげで顔が強張ったから“淡白なの?それとも良くない?”って、その時先輩に聞かれた。」
不服そうに肩を落とす久々知。
「やっぱり淡白って言われたんだ〜!?」
ゲラゲラと笑う鉢屋と竹谷。

「じゃぁ、兵助も実習が“初めて”だったんだ?」
と、最初の話題へと戻した尾浜にコクリと久々知が頷く。
「で、でっ!?勘と雷蔵と三郎と鴻は!?」
と、好奇心丸出しで竹谷が迫る。



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