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原価零の愛

「あっ、そうだ雷蔵、悪いが今夜部屋を空けてくれないか?」

近江の部屋に六人がぎゅうぎゅうと集まり、予習復習の教え合いを行っていた所、ふと思い出した様に鉢屋が口を開く。

「うん、構わないよ。あれ?もうそんな時期だっけ。」
快く承諾した不破は、鉢屋の要求に思い当たる節があり、ふぅとひとつ溜息を吐く。
「あぁ〜〜〜、そっか、そんな時期だな。あれって時期が全員違うから予想つかないよな。」
竹谷も不破の心当たりに同意する。

「…俺、まだ聞かされてねぇわ。皆は?」
と、言葉を続ければ「俺はもう終わったよ。」と尾浜がしゃべり、「俺はまだ聞いてない。」と久々知が続く。
他の二人は?と目を向ければ「僕は二十日後だって昨日聞かされたよ。」と不破が答え、「あっ、俺は明後日だわ。」とすっかり忘れていた様子で近江が零す。

「勘右衛門、もう終わったのか!どうだった!?今回の色の実習!!」
竹谷が喰い付く。

ここ忍術学園では、くノ一として房中術の授業もくノたまでは行われる。
それは四年生から徐々に始まり幅も広い。
最初は町に出て男の人に声を掛けられる事。という所から始まり、お茶を奢らせるとか贈り物を贈らせる様に仕向けるとか、如何に相手の心に入り意のままにさせるかを学ぶ実習だそうだ。
後の秘密裏な情報収集や情報操作などに結び付く。

更には、閨での男は隙が多いので付け入るにはもってこいなのである。
女の身体は立派な武器だ。本能に忠実な愚かな者は、油断させられ絆された先から上手く操つられていく。…抗えない悲しい性だと思う。

本題に戻るが、町での実習がひと段落すると、少しずつ実習相手が同じ忍術学園の忍たま達へと移る。
それは、三禁の“色”に溺れない為の訓練と、逆に忍たまにとっても女中を懐柔して情報を得る為の訓練ともなるからである。
懐柔させようとする忍たまと、溺れさせて油断させようとするくノたまの熾烈な戦い…もとい訓練となるのだ。


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