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「お前軽いな、体重つけねぇと力も安定力も出ないぞー。太れ。」
止まって降ろすなんて気は毛頭ないのだろう。
ぽんぽんと相手の腰に添えた手で撫でてやりながらケラケラ笑い、暴れる身体を強めに抑えた。

「五年だろうが六年だろうが、俺の可愛い後輩であることには変わりねぇだろ?」
先輩がちゃんと連れてってやるからなー、なんて楽しげに言うと、いくら暴れても降ろさないと笑みを浮かべる。

「お前が俺に追いついて同じ歳になれたら降ろしてやるよ。」
担がれた鴻には見えないだろうが、そう話す暁人の表情は至極、楽しそうだった。



近江からは遠野の顔を窺い見る事は出来ないけれど、ケラケラと笑っている振動が密着したところから伝わってきた。

じたばたとしてみたものの、一向に降ろしてくれる気配のない遠野に、近江は観念したように「…ふぅ」と息を吐く。
「こういう時、つくづく七松先輩を育て上げたのが貴方だと実感しますよ。」
眉を八の字に下げて、もがくのを止めた。
その代わり、遠野の肩に腹を置いて担がれている状態から「よっ」と上半身を起こし、頭一つ分下にあるその顔を見つめた。

「同じ歳に追いつけだなんて、そんな無茶を言うところも、本当にそっくりです。」
ここには居ない暴君を思い浮かべて、そして目の前の遠野に向けて、至極可笑しそうに近江が笑った。



そんな言い方狡いです、歳の差は埋められないのに

(―――でも、そんなところも尊敬しておりますよ、遠野先輩)






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