03





女性の努力は凄いですよね。と鴻君は再び笑った。
「滝や立花先輩の努力もそれに並ぶと思います。彼等の場合はこの状況下でって考えると本当、尊敬に値しますよね。」と、まじまじと続ける。

上から目線で高飛車だと思われがちな二人は、それ相応の磨く努力と維持する努力を備えている。
加えてその努力を表に出さず、それ以外のことも決して怠らない姿を知っている鴻君は、彼らを思い出して慈しむ様な瞳をする。

滝夜叉丸君に関しては、それ故に饒舌な話し振りと共にされる自慢に、周りから煙たがられがちだが、鴻君は嫌な顔一つせず楽しそうに彼の話を聞く。
そんな姿を見受けることが良くあった。

「鴻君がそれに気付いてくれているって事、きっと滝夜叉丸君には嬉しい事だろうね〜。」
その同級を思って素直に肯定すると、鴻君は再びゆっくりと此方を振り返る。

「タカ丸さん、俺の今の話を肯定してくれるって事は、タカ丸さんもそれに気が付いているって事なんですよ。滝は幸せですね、タカ丸さんのような人が同級に居てくれて。」

そう一等優しく微笑む鴻君に、僕は思わずどきりと胸を高鳴らせる。
「・・・そう、かな。」
心音が言葉と共に聞かれてしまいそうで、歯切れの悪い返事をする。

「そうですよ。」
鴻君はそう答えて、更にふっと瞳を細めた。
その様子に、手に束ねた鴻君の髪を、僕は思わず取りこぼしそうになった。



触れた指先に疼く熱

(どうしよう、指が震えそうだ・・・)





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