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「・・・恋情の逸りをまだよくは解かってはいないけど…それでも、こういうのを“衝動”と言うんだろうな。」
鴻が考え深げに瞳を細める。



「俺は、お前に触れたり触れられたりするのが一等、好きだよ。」



にこり、と鴻が穏やかに微笑んだ。

ぶわっ、と涙が溢れた。
これは夢なのか、私の妄想が魅せている幻なのか、もうわけが分からなくなって、けれど真実だと確かめたくてもう一度ぎゅうぅぅぅぅっと鴻を抱いた。

「鴻、鴻鴻・・・これは現実の事だよな?私の恋慕が実ったって事だよな?そうだよな?」
幼い子どものように、何度も何度も確かめる。
泡沫のように消えてしまわないように、この腕に居る鴻に縋った。

ひくり、と喉を鳴らしてぎゅうぎゅうに抱きしめる私を、鴻の手が優しく背を撫でてくれた。
ぽんぽんと、宥めるように、安心しろと伝えるように。

「本当の事だよ、三郎。」

私の耳朶に鴻の唇が掠め、優しく少し低めの甘い声が直接鼓膜を震わせる。
ぞくぞくぞくっと、背を甘美な快楽が走り、歓喜が生まれた。
「鴻鴻鴻、好きだ、大好きだ、絶対に離しはしない・・・。」

愛おしくて愛おしくて、人は恋慕の情が溢れ過ぎると、逆に何も出来なくなってしまうものなのだなぁと、至福に満ちた頭でぼんやりと思う。
「鴻、ずっとずっと私の傍に居て欲しい。この先も共に在ると、そう誓ってくれ。」
涙に濡れた顔など気にも留めずに鴻を見つめると、鴻はふわりと、それはそれは甘い微笑を返してくれた。








君と繋がる糸が欲しい

(―――願わくば、最期まで。)





■次項あとがき■


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