06




もう限界だった。勘違いでもいい!!
溢れる衝動のまま、私は鴻を掻き抱いた。

「鴻、それは好い返事だと受け取るぞ!?そこまで言っておいて違うなんて言われたら、私はどうにかなってしまう!!」
半分脅しのような文句を言ってやる。

心底私は狡いと思う。
けれど、それ以上にこの男も狡いと思う。
(何度も諦めようと、友のままでいようと思うのに、その度にお前はこうやって私を魅了し虜にしていく。・・・いや、私が勝手に囚われているに過ぎないのだろうが、そんな反論は聞き入れてやらん。)
私は誰にとも無く、胸中で啖呵を切った。

ぎゅうぅぅぅぅっと締め付けるように抱きしめていると「・・・三郎、痛い」と、鴻がくつくつと笑って抗議した。
「悪い。」
傷に障っては大事だと思い、腕の力を緩めて鴻の顔を窺い見ようとした、その時




















―――ちゅっ





と、掠めるように唇に触れるものがあった。

「えっ?あ、えっ、鴻?」
情けないことに、あまりの事態に頭が真っ白になり、思考が停止した。
ぱくぱくと口を開閉するしか出来ず、上手く脳が処理してくれなかった。

「ははっ、凄く驚いてんな。」
くしゃりとはにかんだ鴻が笑った。
「俺も自分の行動に吃驚した。」
そう照れくさそうに笑むと、ついっと私の前髪を梳く。


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