07




「んっ…。」
ぴくっ、と鴻の身体が震える。
それすらも愛おしくて、どんどんと口付けを深くした。
「んぁ…っ、ふぅ、」
少しだけ苦しそうな、けれど鼻に掛かった甘い声を鴻が洩らした。
「可愛い、鴻。」
ちゅっ、ちゅぅ っと、わざとらしく唇を啄んで音を響かせれば、びくっと、恥ずかしそうに鴻の指先が震えた。
最後にぺろり、と鴻の唇を食んで舐め上げたら、ぶるりと、その身を振るわせた。
その一挙手一投足がたまらなく愛おしい。

「鴻、鴻。」
息を整えるのに肩を上下させている鴻を見つめて、その名を呼ぶ。
「もっと、して良い?」
そう鴻の前髪を梳いて問うたら
「だ…駄目です。ちょっと待って下さい。」
と拒否されてしまった。

「え…えぇぇぇ!?どういう事!?やっぱり口付けしてみたら気持ち悪かった!?勘違いだったって事!?」
崖から突き落とされたような衝撃に僕が慌てふためいていると
「ち、違います!そうじゃなくて!吃驚したんです!!」
と、鴻が慌てて僕を落ち着かせようと声を張り上げた。

「前言撤回という意味ではありません。その、なかなかに無い心情に自分でも驚いてしまって。」
そう言って鴻がはにかんだ。
「触れられる事が、こんなにも胸を苦しくさせるなんて思いもよりませんでした…。」
どこか泣きそうでいて、けれど至極幸福に満ちた面持ちで鴻が僕を見上げる。

「そ、そんな姿見せられたら!それこそ胸が苦しくて苦しくて、鴻が愛おしくて、僕が変になっちゃうよ!」
いじらしい姿の鴻に、僕の中の全神経がぶわりと甘美に震えた。
「もう!何処まで僕を虜にすれば気が済むの!?」
半分自棄のように、想いのまま叫んだら、鴻が「ははっ」と笑った。


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