03




先の竹谷の言葉を実感した。
この子の気配を読む鋭さは、感服に値する。

「凄いね。でも、来訪内容までは察知されなかったわけだ。」
僕は眉を八の字に下げてくすくすと笑った。
そんな僕を
「委員会とは別ですか?」
と、きょとんとした鴻が見つめる。

どきんッ、と胸が高鳴るのが分かった。

目の前の鴻の身体は所々に包帯が巻かれ、麻布や塗布薬、軟膏の独特の匂いがした。
けれどそれとは別の、鴻特有の、どこか甘い、優しい香りも届く。

ずくっと、胸に重圧が掛ったように疼いた。

「委員会とは別だよ。…その、けじめをつける為にも、聞かなきゃなぁと、思って。」
緊張のあまり、言葉が途切れ途切れになってしまった。
「?」
状況を呑み込めていないのか、未だにきょとんとした鴻が僕をじっと見つめている。

ごくり

告白の返事だよ。と言いたいのに、恐くて喉を鳴らす事しか出来なかった。
言葉を紡ごうにも、カラカラに乾いて張り付いた錯覚を起こす。
落ち着け、落ち着け。
そう何度か唱えた後、ふぅ、と一つ息を吐いた。

「その、鴻が出て行く前に、保健室で…告げた僕の気持ち。その返事を貰おうと、思って。」
絞り出すように紡いだ言葉は、尻蕾になって、最後は消え入るやっとの声で伝える。
それにつられて伏せてしまった瞳を鴻へと戻すと
ぽかん、とした表情で僕を凝視していた。

あれ?僕変な事言ったかな?

そんな事を思っていると、ハッと気が付いたように鴻が居住まいを正し、突如その場に詫び伏せた。


[ 163/184 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]



- ナノ -