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触れた指先に疼く熱

「鴻君の髪は梳きやすいね〜」
斉藤はそう言いながら近江の髪を慣れた手つきで梳かしていく。
「そうですか?」
特に意識したことの無かった近江は反射的に返す。

「うん、とっても滑らかで絡まないよ〜。鴻君の髪質だと凝りやすいのに。」
感心感心と、彼特有のふにゃりとした笑みを浮かべて頷く。

近江の髪は細めで量がさほど無い分、一緒くたになって凝りやすい。
しかし程好く手入れがしてあるようで、そう言った問題は見受けられなかった。

「何か手入れしているの?滝夜叉丸君や立花君ほど徹底されているわけじゃないけど、洗い晒しって感じでもないもんね〜?」
元髪結いである四年は組の斉藤タカ丸は、こうやって気になる生徒の髪質を見つけては、触らせてくれと強請って手入れをする。

斉藤と同級生(と言っても、斉藤の年齢は六年生と同じで、この年になってからの途中編入の為四年から学び始めた)である四年い組の平や同学ろ組の田村、六年い組の立花ほど徹底している人は別として、五年い組の久々知や一年は組の笹山・夢前などの、手入れは抜群とは言えずとも綺麗な髪質をしている人には目がない。
そこに並ぶ五年は組の近江鴻も標的にされていた。
今までなかなかまとまった時間が取れなかった為に延期になっていたが、漸くゆっくりと触らせてもらえる時間が出来た。
この機会を逃がすわけには行かないと、風呂上りに縁側で涼んでいた近江を斎藤が捕まえて今に至る。

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