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ただ僕はひどく欲張りで

鴻の騒動があってからしばらく騒然としたものの、最近は鴻の怪我も落ち着き、学園内も日常を取り戻していた。

最初は保健委員会の子たちも、鴻の怪我を知り青くなったり、心配で真っ赤になって怒ったり、大変だった。

いつもは控えめな数馬や目上にきちんとしている左近、温和な乱太郎、毒舌だけど怒りとは縁遠い伏木蔵もわぁわぁと泣いて怒った。
詳細は伏せたけれど“鴻が無茶をした”という事を教えると、自分たちでは力不足だけど、力になりたいのだと力説を始めた。
その様子を、最初こそ戸惑いを見せたものの、至極幸福そうに聞き入り「ありがとう」と呟いた。その笑顔が嬉しいようで、乱太郎たちは鴻にぎゅぅっと抱きついた。
下級生の頭を順繰りに撫でる鴻は、本当に穏やかで、まるで憑きものが落ちたような面持ちだった。
それを見たら、やっぱり僕は、この子が愛おしくて仕方がないのだと、締めつける胸を押さえながら思ったものだった。

大好きな鴻。
そろそろあの時の返事を貰わないと、僕の気持のけじめもつかないなぁなんて、ぼんやりと考えた。
予想外だったとはいえ、僕は鴻が学園を去る間際に「好きだ」と、恋慕の情を吐露してしまったのだ。
今思えば、何という時になんてことしちゃったんだろう〜〜〜
そう頭を抱えたくなったけれど、不思議と後悔は無かった。
あの時、僕の全てを曝け出してでも留めたかったのは本当だから。

(でも、返事を聞くのは恐いな〜)
僕は弱々しく苦笑を浮かべた。

今夜、鴻の部屋に行ってみようと思う。
頑張れ、僕。

そう自分を叱咤して、残りの委員会活動に専念した。

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