02
「気持ち悪いぞ、赤面すんな。」
と私が言い放てば、勘右衛門がけらけらと笑った。
「ちょっ!三郎!おまっ、お前が一番危ない事言い出したんだからな!?」
更に赤くなった八が食って掛って来た。
「私は正直に言ってしまったまでだ。」
そう悪びれなくしれっと言ってのければ
「皆、お前が戻って来てくれて嬉しくてしょうがないみたいだよ。可愛い、愛おしい、俺たちの鴻。」
勘右衛門が鴻の肩に腕を回して耳打ちした。
近すぎるぞ、勘右衛門。
「ふふっ。もう、一人で抱えたら嫌だよ?僕たちは、大好きな鴻の為になら何だってするんだから。」
そう微笑んで、雷蔵は鴻の前髪を軽く梳いた。
それを黙って聞いていた鴻は、照れくさそうに、そして至極幸せそうに、くしゃりと笑った。
そして
「俺も、大好きなお前らの為なら、何だって出来るよ。」
そう、優しい優しい眼差しと声音で、私たちに教えてくれた。
それからは、
此処まで積み重ねてきた恨みや罪や愛情や軌跡は、全て全て私たちを形成してきたもの。
決して美しいものばかりではなく、この先背負って生きていかなくちゃいけないものも沢山ある。
それでも
(―――生きていきたい。)
■終幕■
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