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それからは、

「そういえば、その仇って結局どうしたんだ?逃がしたのか?」
あれから数日、徐々に回復を見せている鴻は保健室の布団に身を起こし、私たち見舞いに来たいつもの面子と談笑していた。
そんな中、ふと思い出したように兵助が問う。
「そう言えば。まぁ、数日前まではそんな事聞くどころじゃなかったしな。」
と、八も眉を下げ、にししっと笑った。

「逃がしてはいないよ。」
鴻が完結に答える。
「えっ、じゃぁどうしたの?」
雷蔵がきょとんと鴻を見た。
「殺さず逃がさず。という事は今どこに居るの?そいつ。」
勘右衛門が少し身を乗り出して問う。
「雑渡さんが捕まえて行ってくれたよ。もともとあの城を落城させようとしていたタソガレドキ城に俺が便乗したから、しっかりと果たしてくれました〜」
苦笑を浮かべて、鴻が肩を竦めた。
「まぁ、俺もいっぱいいっぱいだったから、逃げられないように一発、気を失わさせてもらったけど。」
ははっ、とバツが悪そうに鼻の頭を掻いた。

「でも本当、無事で良かった〜」
はぁぁぁぁっと、これ見よがしに大きな溜息を雷蔵が吐く。
「悪かったって、雷蔵〜。ら〜いぞう?雷ちゃん、機嫌直して?」
なんて、可愛く小首を傾げるから思わず吹き出してしまった。

「ぶッ!ちょっ、鴻!それ、私にもして!」
思わず本音が出た。

「確かに可愛い。」
兵助も、うんうんと真剣な面持ちで頷く。

「男が可愛いってのもどーなんだよ。まぁ…可愛いけど。」
そう言って、八が赤面した。

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