04




それだけを言うと、近江はゆっくりと瞼を閉じた。
ぴくり、と雑渡の口角が動く。

「確かに聞き届けたよ、鴻君。」
そう言って、雑渡は近江を抱き上げた。
そのまま固く閉じられた瞼に、雑渡は包帯越しに口付けを落とす。
既に意識を手放した近江の腕は、力無く重力に沿ってだらりと落ちた。
その腕をしっかりと腹の上で組ませ、振動に耐えやすい姿勢へと変える。
「お疲れさん、鴻君。」
雑渡はもう一度、ぎゅっと近江を抱きしめた。



弔うのは、どっち

(―――温かい。子どもの、体温…。)





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