01



弔うのは、どっち

パチパチと燻った音を弾かせて未だ消えぬ炎。
燃え盛った木々の灰と煙で、視覚は酷く悪い。
数日に渡った戦火は終焉を迎え、今は生きている者より遥かにこの世を去った者の方が多いこの場所で、雑渡は人を探していた。

見渡す限りの屍。
あんぐりと大きな口を開けて息絶える兵。
焼け爛れ、既に顔の判別も出来ない忍。
鼻をつく肉の焼ける臭い。
それは有象無象の人間…だった者たち。
てらてらと赤黒く鈍い光を放つ刃。
錆びた鉄の臭い。

「…ふぅ。」
雑渡は小さく息を吐く。

しばし前まで響き渡っていた怒号と断末魔。
酷く残虐な光景。
もんどり打つ肢体。
血の海にくったりと身体を広げ動かなくなった塊。
自分を見上げる、虫のような幾つもの目。

(鴻君は、どこだろう。)
くるりと周りを見渡す。
パキッと、踏みしめた焼け枝が鳴った。

鴻君が反旗を翻して、仕えていた城主に刃を向けた話しは聞き及んでいた。
それにより仲間であった城忍や兵に狙われている事も、そして事情を呑み込めていない我がタソガレドキ忍軍に変わらず狙われている事も。
尊や陣左は驚いてはいたけれど、私たちにも私たちの仕事があるので余所見をするなと窘めておいた。
という事で戦が鎮火した今、結果がどうなったかを見に向かっているというわけだ。

奥の間へと足を向ける。
城主が奥へ奥へと逃げるのはお約束というものだ。
奥になればなるほど強くなる守り固めを突破し、尚且つ脱出を許してなければ、近江はそこに居ると踏んで雑渡は進める足を速めた。

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