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…城主となったあの男には、恐れるものなど無いのだろう。
傍若無人な振る舞いで、いつしか歪みが生まれた。

諜報活動を担う為に雇われた俺はそこに漬け込み、情報操作をしてあの男に不利な状況をじわじわとつくってきた。

そして、その“不利な状況”の相手というのが、タソガレドキ城だ。
こちらの城に勝ち目なんて無い。

今は仕えている(振りをしている)が、今夜タソガレドキ城が攻め込んでくるのを機に、反旗を翻してあの男諸共この城を潰すつもりだ。
タソガレドキ城は勿論の事、同城の人間にも内密で進めてきた事だから俺に仲間がいるわけではない。単独での反旗だ。

雑渡さんには見透かされてしまっているようだが…だからといってあの人が特別に動く事はないだろう。よってあの男を仕留める前に、タソガレドキ城忍軍に敵兵として殺されるかもしれない。もしくは、同城忍軍に裏切り者として殺されるかもしれない。

けれどそんな事は瑣末な事で、あの男が行ってきた事、そして今も尚行っている悪行やあの男の支配に苦しめられている人を少しでも救い出す事が出来るのであれば、刺し違えてでも成し遂げたいと思っている。




(…いや、救いたいだなんて、なんとおこがましい言い分だろう。
そこに託けて己の復讐を肯定しようだなんて、俺もあの男となんら変わらないじゃないか。)
無意識に自嘲の笑みが浮かんだ。

(もう、引き返せないところまで来てしまったのだろうか。)
そこまで考えて、俺はぶんぶんと頭を振った。
余計な思考は排除し、ただ、遂行だけを考えようと大きく息を吸った。































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