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離れるまで気付かなかった、その大切さとか。思い入れとか。こんなにも、自分が馬鹿みたいに執着していたこととか。

実父との逃亡生活の中で、年齢を重ねるごとに疑問に思うようになった事がある。
それは“抜け忍”として追われていると言っていた実父の言葉。
幼い頃はそうなんだと鵜呑みにしていた。
しかし追手の執拗な行動と、実父の出生の境遇を考えたら段々と不思議になっていった。

実父は、実父の曽祖父(俺からすれば高祖父に当たる)からの隔世遺伝で瞳に緑と蒼が混在していた。
英国の血が混ざっている事で犬猿され、辛い幼少期を送った祖父(俺にとっての曽祖父)は、酷く実父の容貌を嫌悪し、実父の父(俺にとっての祖父)は刷り込みで同じく嫌悪の色を示したらしい。
その為一族からの当たりは強く、逃げるようにして忍術学園へ入ったと言っていた。

そこで疑問が一つ出て来た。
いくら一族の掟とは言え、それほどまで犬猿していた者に里の情報を教え込んでいたともあまり思えない。ともすれば漏洩する情報も少なく、十の歳を迎える頃には忍術学園に入り、その後里に戻る事は無かったと言うのならば、監視として時たま同族が現れようとも実父には里に関して知り得る情報など無いに等しかったはずだ。
ならば何故、そこまで執拗に…という疑問を抱いた。

そして、もう一つ疑問に思う事があった。
それは“没落後なのに”というところだった。
天下統一を目指して功績を上げていた矢先での逃亡なら隠蔽に必死になるのは解る。
秘密裏な情報が漏れ出ては惨事だ。
しかし没落したとあらば、そこまでの執拗さは必要だったのだろうか、と。

同胞からの抜け忍としての追跡にしては勿論の事、雇われていた城(実母の実家)からの追跡にしても、攻め込んできた敵城からの母の存在隠蔽にしても、没落した武家に対していささか執拗な事。



この全ての疑問を繋げ、少しずつ調べて判った事は…。



黒幕が
「父とされていた人」

…あの男だったという事だった。

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