04




「俺の意志に、変わりはありません。」
淡々とした答えが返る。
「この話しはもう止めてください。」
廊下から人が近づいてくる気配を、二人とも感じていた。
懇願するように雑渡を見上げる近江の瞳が微かに揺れる。

「肝心な所をまだ聞いてないのに〜。じゃぁ、これが最後。」
にやり、と笑う雑渡に、段々と近づいてくる気配。
近江の顔に焦りの色が見え始める。

「自分も死ぬかもしれないのに、その意志は変わらないの?」
悠々と問う雑渡。
「雑渡さん!」
遮るように近江が叫ぶ。
「あっ、違うか。“かもしれない”じゃなくて、」

―――ガラリ

と、戸が 開く。

「仇討を成し遂げて死ぬつもりだもんね、鴻君は。」
内容にそぐわない軽い声色で雑渡が言い放った。
目を見開く近江。そして戸に佇む、


「な…に、して…る、の?」


善法寺。




一瞬、世界の音が全て消え失せた。




一途な黒を溶かしてみせて

(―――鴻君、君は何を選ぶんだい?)





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