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「ぅふっ、」
少し息苦しそうな、鼻に掛かった声を漏らす。
どうにも口付けにだけは不慣れな鴻が、堪らなく私の加虐心を煽り、それと同時に言い得ぬ愛おしさと幸福感に満たされる。

(好きで好きで堪らない。全部暴いてしまいたいくらいに。)

獰猛な想いが下腹部から這い上がり、貪るように口付けた。
舌を絡ませ甘噛みをし、軽く吸い上げれば鴻はぴくりとその身を震わす。
「んっ。鴻、鴻…」
愛おしい者の名を、息を吐くほんの合間から呼べば、自ずと劣情が膨らんだ。

するり、と抱き締めていた右手を鴻の袴へと滑らすと、びくっと鴻が硬直するのが分かった。
「三郎!もう、やめ…」
出来る限り身を捩って逃げようとする鴻の足を割って、己の足を割り入れてしまえば体制は私の方が幾分有利になった。
「ごめん、鴻。でも、煽ったお前が悪い。」
とんだ責任転嫁だと自分でも思う。
けれど、止まれる余裕は当に無くしていた。
いやいやと頭を振る鴻を無視して下肢にそっと触れると、本日何度目かの驚愕に目を見張る。
「…少し勃ってる。」
驚くあまり状況をそのままに口に出したら

―――ゴンッ!!

と、ゲンコツが降ってきた。
痛い。

「ばっ!そういう事…言うなよ。」
心底恥ずかしいようで、鴻は耳まで朱に染め上げそっぽを向いてしまった。
「…鴻、可愛い」

ちゅぅ、ちゅっちゅ

向けられた耳朶の裏や頬、目尻に口付けを落とすと「…っ、」と耐える声が聞こえた。
今日の鴻は、後にも先にももう無いのではないかと思う程新鮮な面ばかりを見せてくれた。
涙も然り、ここまで常とは違う気の昂ぶりと反応。
鴻にここまでさせてしまう妹御の誕生というのは、計り知れない、鴻にとって掛け替えの無い出来事だったのだろう。
ほんの少しだけ嫉妬が芽生える。
つくづく私という人間は愚か者だと自覚した。
(妹御にまで嫉妬してどうする…。恋情とは恐ろしいものだ。)
どこか冷静な自分が毒吐くも、反応してしまっている身体は聞く耳を持たない。
意地悪心も相俟って、ぐぐっと鴻に密着していた自身の下肢を、さらに押し付けた。



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