04




「妹御のご誕生、おめでとう。」
そう私が穏やかな笑みを浮かべて祝福の言葉を述べれば「ありがとう。」と、無防備な甘い笑顔で鴻は礼を述べた。
今度こそ限界だと独りごちる。
「人がせっかく耐えているというのに。愚か者。」
「えっ?」
と、問おうとした鴻の首筋を、食む。
「あっ、」
ひくり、と攣った声が微かに聞こえた。






愚か者は自分だとつくづく思う。
純粋に家族が増えた事を喜ぶ姿に欲情するなど、甚だ可笑しい。
けれど、今まで見た事の無い鴻の涙や、砂糖菓子の様に甘い笑顔を見せられたら不埒な思いが首をもたげてしまう男心も解って欲しい。
加えて抱き締めれば、抵抗しない所か擦り寄って来たとあらば、理性もぐらつく。
もしかしたら跳ね除けられるかもしれない、その覚悟を持ってあの日以来触れたくて触れたくて堪らなかった唇を吸えば、すんなりと受け入れられてしまった。

…こういう所が性質が悪いって言うんだ。

ぴちゃり、とその柔らかい首筋に舌を這わせば、鴻はふるりと肩を震わせた。
「ちょ…三郎、やめ、」
私の両肩に手を添えて押し退けようとするも、がぷり、と喉元を甘噛みすると「あっ…」と可愛い声を聴かせてくれた。

「はぁっ…鴻、気持ち良いのか?」
ぐっと抱きしめる腕に、更に力を込めて密着を増す。
木陰に入ればひんやりと、樹木の水分が肌を潤わせてくれ暑くはなかった。
けれど、別の意味合いで私たちの体温は上がっていた。
「…急にどうしたんだよ、」
身を捩って逃れようとする仕草さえも愛らしいと思う私は、もう末期だと思う。
涙に濡れた瞳が扇情的で、ずくり、と私の腰を重くさせた。
「…んっ、」
再び鴻の唇を塞ぎ、その口腔内へと舌を割り入れた。



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