04




「からかわないの。」
僕は肯定も否定もせずに曖昧な笑みを零すと、その傷にたっぷりと消毒液を含ませた麻布を当てがった。
「痛ッ。」
びくっと肩が跳ね、鴻が声を引き攣らす。
「当たり前でしょ。滲みるやつ使ったんだから。」
しれっと僕は答えてやる。

ドキドキと拍動が増し、より大きく鳴っているように感じる心音と、火照る顔を誤魔化すように。



傷跡に愛を塗り込んだ

(―――鎮まって、お願いだから)





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