03




「ごちそうさまでした!」
店先にそう声を掛けて歩き出す。
何か言いたげに鴻は少し口を開いたけれど、言うよりも先に鴻の手を更にぎゅぅっと握った。
その後は別段何を言う訳でも無く、好きなようにさせてくれた。
年頃の男二人が手を繋いで歩くなんて滑稽だろうけど、学園に続く山道に入ってしまえば関係の無い事。
それよりも俺は、この手に宿る温もりを大切にしたかった。



手を繋いで歩く事だけが俺たちに出来る唯一の、

(―――この奪いたい衝動をどうしてくれるわけ?)





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