03




どうして!とか、先生ならあいつを止めて下さいよ!とか、お門違いな怒りが喉元まで込み上げた。
それを無理やり呑みこんだら、ひゅっと喉が鳴った。
「…兵助、お前の言いたい事は解る。私も同じ気持ちだ。だけど、仮にも私たちは忍だ。どうするかを決めるのは私たちではない。あの子なんだよ。」
土井先生は俺の元まで歩み寄ると、優しく俺を抱き込んだ。
「それでもやっぱり大切な、可愛い生徒に変わりはないから。どうか無事に戻って来れますようにと、祈るばかりだ。」
ごめんな、兵助。とぽつりと零す声色には忸怩(じくじ)たる思いが滲んでいた。
グッと涙が競り上がってきた。
土井先生が謝る事ではない、ましてや俺が怒っていい事でもないんだ。
だけど、でもッ!!

…何も言葉に成らず、俺は土井先生の背にしがみ付く事しか出来なかった。



こうして、また何も出来ずに日は過ぎていくのだ

(―――胸が千々に乱れる思いがした。)





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