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「やっ、あっ。んんっ!!」
ゆっくりと上下に動かされる指は、段々と乱脈を極めた律動をもって扱かれる。
「んあッ!!はぁ…っ!」
集約してくる悦楽の波と浮遊する意識。
朦朧とした意識で、縋るように鴻の背に腕をまわせば、その肌も熱を帯びて少し汗ばんでいた。

―――嬉しい。お前も感じてくれているのか。私と体温を分け合う事を、悦んでくれているのか。

ぽろっと思わず零れた涙を、鴻が繊細な動きをもって舌先で拭ってくれた。
「あぁッ!!」
ぞくぞくぞくっ、と背筋を官能的な痺れが走り、ビクビクッと下肢を震わす。
這い上がる快楽。
そして腹の底から競り上がってくる切迫した緊張に、知らず腰が浮いて揺れた。

夢中のあまり、鴻の背中にガリッと爪を立ててしまった。
そこから限界を悟ったのか、鴻の手が更に激しい韻律へと変わった。
チカチカと視界が明滅して、その刹那、私の中の熱が爆ぜた。
「はぁぁぁ―――ッ!!」
白濁した飛沫が鴻の手をしとどに汚す。
登る悦楽のままに達した私は、そのまま意識をも手放してしまった。



反論さえ呑み込んで

(―――お帰り、三郎)





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