09




じゅっ、ちゅぅ、ぴちゃり。

絡み合う舌を吸い上げれば、近江は微かにくぐもった吐息を洩らした。
その姿が愛おしくってそっと唇を離せば、二人の間を銀の糸が引かれて消えた。
こくり、と近江の喉が鳴る。それだけで鉢屋の腰をずくり、と重くした。

「はぁっ…鴻、好きだ。好き…」
思わず零れた本音と共に、私は鴻の下肢に手を差し入れようと更に身を起こした刹那、その手をやんわりと掴まれた。
「わっ、」
と、状況を呑み込めぬまま気が付いたら身体が反転し終え、私が組み敷かれていた。
仰向けにされた事に目を白黒させていると、半身だけ覆い被さる様な格好になった鴻が私の夜着の前を寛げ、下穿きの上からその滑らかな指で(けれど少し節のある、男の指で)私のものに、触れた。
「あぁっ!」
びくん、と腰が跳ねた。 
電流が走ったような感覚に、ぎゅっと目を瞑る。
信じられないくらいの快感が、全身を駆け巡った。
好いた相手に触れるという事、そして触れられるという事がこんなにも幸福で甘美な快感を引き起こすものなのかと、鈍くなっている頭で思う。

優しい力で摩られる度に、まるで生娘の様に身体を跳ね上げ、善がった。
「んっ、あっ!!はぁ、んぅっ、」
女みたいだ、と思った。
鴻に反論しようにも、零れるのは己の嬌声ばかり。
「鴻鴻、あぁっ!もう…ッ」
苦しくて助けを求めるように鴻を見上げれば、とても穏やかで愛おしい者を見守る様な眼差しに晒された。
自身の頬がカッと朱に染まるのが分かった。
その怯んだ隙に下穿きをスルリと解かれた。
そして緩やかな力をもって私自身を握られる。
「あぁぁッ!!」
もう、それだけで気をやりそうになった。

じゅっ、ぐちゅぐちゅっ、ぐちゅり

淫靡な音と断続的な喘ぎ声が響く。



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