03




僕の中に恋慕の想いがあったと知っても鴻はきっと変わりはしないだろうけど、まさかそれだけではない情も少なからず混ざっていると知れば、きっともう甘えてはくれなくなるだろう。
そう思うと、母性と見せ掛けて触れることしか出来なかった。

ちゅっ、と鴻の瞼に口付けを落とす。

「雷蔵、くすぐったい。」
くすりと鴻が笑む。
「ふふっ、昼休み終わるまでにもう少しあるから、少しだけ眠ったら?」
僕が疲労を見越して言うと「あぁ…。」と、鴻は小さく答えて瞼を閉じる。
その様子を見つめて、僕は慰労するように鴻の頭を優しく撫でた。



だからこそ、僕は言わないよ。言ってあげないよ。君が好きだなんて。

(―――無防備な姿。鴻、今を唯一の僕の特権にさせてね。)





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