02




「ただし条件がある。工面する代わりに、今晩は手加減無くお前を抱かせろ。嫌と泣いても止めはしないよ。一晩、俺の我儘に応える事。それが呑めないなら、今の話は無しだ。」
「…それは、」
近江が逡巡して瞳を揺らす。
「ん?どうした?呑めないか?」
「いえ、あまりにも身に余るご厚意に、その、愕いてしまいまして…」
「お前は本当に謙虚だなぁ。俺はお前の所に通い始めてから我儘という我儘も、お強請りもされた事が無い。最後くらい、俺を頼れ。」
ドサッ、と近江を布団に組み敷く。
「…若旦那様、私になぞこのような至大な恩恵を施して下さるなんて…何とお礼を申し上げたら宜しいのか…」
近江は上手く感謝の言葉が述べられず、その代わりに布団に縫い止められた手を、若のその指に絡ませた。
それを返事と取った若は、恍惚とした表情で自身の唇を舌舐めずりした。
これから起こる淫靡な秘め事を揶揄するように。

「唇の純潔だけは守ってやるよ。それがお前の高潔さでもあるのだからな。それ以外は聞く耳は持たないぞ。声が嗄れるまで、俺の為だけに、啼け。」
「…仰せの儘に。」
そうして夜の帳は、一層濃く深く二人を呑み込んでいった。



きみと禁忌の密約を

(―――若と胡蝶蘭様のおかげで、忍術学園の門を潜る事が出来たと言っても過言ではない。)





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