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後に“あの時は何故か胸が逸り、落ち着かせる為に外に出たの。本当にびっくりしたわ。”と語った。

母はその頃、その遊里ではそれなりの地位を築いており、店主に事情を説明し頼み込んでくれた。
寛大な店主は、客人の前では性別を偽り、後の言葉で「禿」と称する位置に立って奉公をするという事を条件で俺にも衣食住を提供してくれた。
勿論周囲には親子とは伏せ、戦災孤児となった親戚だと説明する事も条件に含まれた。
母は、俺への愛故に納得しきってはいなかったが、仕事の上でもここで生きていく為にも最善の方法だと説得したら、しぶしぶ承諾してくれた。

親子共々遊里の皆には感謝し、勤勉に働いた。
そこでコツコツとお金を貯めたのと、俺を寵愛してくれた二人の人物の御陰にて、俺は二年生の途中から編入出来、今に至るというわけだ。

更に細かい事は、後々語るとしよう。



くるくる、まわって、きれいで、真っ赤で

(―――廓の姐さん達には、感謝してもしきれない。)








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