04




「…口付け、しちゃったね。」
「…そう…ですね。」

夢現の彼の今の頭では疑問に思う事では無いらしく、すんなりと事実を受け入れている様子だった。


「…ごめんね、もう一回…」


ちゅくっ…

善法寺は返事を聞かずに、再び唇を重ねる。
「んっ…う…ん。」
重ねるだけの口付け。
啄ばむ様な触れ合いを数度繰り返す。
その度に近江は鼻にかかるような吐息を漏らした。

嫌がられている素振りは無かった。
手を引いて来た時と同じ様に、自然な行動として受け入れてくれているように思えた。

――――――嬉しい、嬉しい、嬉しい。愛おしい。

近江の後頭部と腰に手を差し込み、より身体を密着させるように抱き寄せる。
「…鴻、鴻。」
息継ぎを促すようにほんの少し唇を離して名を呼べば
「はぁ…っ、ん…」
と、息苦しそうに酸素を肺に入れようと悩ましげな声を聞かせた。

甘い痺れが体中を駆け巡る。
この胸中に居る事実が信じられなくて、もっともっとと、ぎゅうぎゅうに抱き締めた。
「…せんぱっ、苦し…」

善法寺の肩口に額を押しつける形となった近江は小さく抗議の声を上げる。
「ごめんね…。」
そう言って、善法寺は再び唇を重ねる。



[ 74/184 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]



- ナノ -