02




そんな事を考えていたら、その六年生に対して刃が振り下ろされた。
間髪入れず近江が苦無を投げる。

ヒュッ

鋭い風音が一つしたかと思えば、寸分の狂いも無く大男の喉笛に突き刺さっていた。
どさり、と無駄な動きなど一つもなく大男が地に伏せる。
ひゅーひゅーと鳴るその喉元からは深紅の血が後から後からと溢れ出す。

大方実習帰りの生徒が運悪く、学園長の命を狙った忍に見つかって襲われたのだろう。
ぎゅっと弱い気配の男を抱き締めている男の許へと降り立つ。
「大丈夫ですか?」
そう声を掛けたら、抱き締めている男を更にきつく、守るように抱きながら六年生が顔を上げる。


絶句した。


その六年生は、重症を負った六年は組の食満留三郎先輩と、同室の伊作先輩だった。
「鴻…?」
驚愕に見開かれた大きな瞳の伊作先輩。
心なしか手が震えている。
「…早く手当した方がいいでしょう。食満先輩は俺が担ぎます。」
伊作先輩の問いに答える事はせず、食満先輩の身体に手を伸ばす。
びくり、と伊作先輩の肩が震えた。
その反応に、俺の手も一瞬止まる。
「恐い…ですか?」

俺が。

「鴻…。」
もう一度善法寺が近江を呼ぶ。
その声を無視して、近江が針型手裏剣を飛ばした。
シュッ、ヒュン
風を切る音と同時に善法寺の横髪を逆巻いた。



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