カーテンを開け月を見ながら、部屋の電気を消してランタンに火を灯す。

そして昼の間に外出して街で買ってきた、ハロウィンの飾りのついたケーキの上にもろうそくをともし、一人深夜のお茶会をはじめようとしたその時、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえる。

「ダレ?」

「俺様だから、開けろよ。」

「勝手に開ければ?」

アヤトの声にそう返すと、オマエ偉そうだなムカツクとか言いながら、部屋へと彼は入ってくる。

「オマエ何してんだ?…黒魔術でも始めんのか?だったら手伝ってやってもいいぜ?」

真っ暗な部屋にろうそくの明かりだけってそういうことだろ!と、彼はなぜかウキウキし始める。

「残念!そういう趣味はないから。今日なんの日でしょ?」

「今日?…あぁハロウィンか。そういやさっきアヤトがそんなコト言ってたな。」

「そうだよ!だからTrick or treat?」

「…ちゃんとあるぜ。ほら!」
これでいいんだろ?そう言って彼はポケットからマシュマロを取り出す。

「マシュマロだー。ありがと!じゃあ私からも。」

ケーキのろうそくを消し、ナイフで切り分けてアヤトに差し出す。

「ケーキとかもらっても俺嬉しくねぇーんだけど。」

「ワガママ言わない。お菓子をもらう日なんだから。」

「だったらタコヤキくれよ!冷凍でもいいからさ!」
アレはお菓子カウントでいいんだろ?オマエこの前『タコヤキはどっちかといえばオヤツ』って言ってたじゃねーか!と、口調を荒げるアヤト。

「そんな日常的にタコヤキのストックなんてないわよ!」

そうやってギャアギャア騒いでると再びノックの音が響く。

「ビッチちゃーん。入るよー」

「いいよって、言ってないんだけど。」

もう、ビッチちゃんはつれないなぁ…なんていいながら、今度はライトが部屋へと現れた。

「もしかしてーアヤトくんとお楽しみの真っ最中だった?だったら僕のことは気にしないで続けていいよ。僕ここで見てるから。」

そう言って私達のそばに座り、こちらをニヤニヤしながら見つめている。

「そういうコトしてないから!ハロウィンだからケーキあげてただけ!」

「えっ?そうなの、それは残念だなー」

「おい、変態。オマエちゃんと菓子準備してきたのかよ?」

「えっ?僕、そんなの準備してないよ。…イタズラしたいの?だったらしても、いいよービッチちゃんはどんないたずらしてくれるのかな?」
想像しただけで、僕興奮してきちゃった。早くしてほしいななんて、頬を赤らめてこちらを見つめてくるライト。

「いや、イタズラしてくれって頼む人にイタズラしたところで意味ないし。ケーキ食べる?」

「えー!!してくれないの?僕悲しいなぁ…」

ビッチちゃんがしてくれるコトなら僕なんでも快感だと思えそうなのに、となおも食い下がらないライト。

「変態、めんどくさいから帰って。」

そういって扉を指さすと同時に再び扉がゆっくりと開く。

「なにしてるんですか?おんなじ兄弟なのに僕だけ仲間はずれにするんですね…」

私達3人の言い争う姿が、カナトの目には仲良くじゃれているように映ったのか、大きな瞳に涙を貯めてこちらをじっと睨んでくる。

「違う!ハロウィンだから、お菓子ちょうだいって言ってケーキと交換しようとしてただけだから!」

本当は一人で味わって適当に寝るつもりだったことは、もうこの際忘れよう。

「そうだったんですね。僕もキミにお菓子持ってきたんです。ねぇ…テディ?一緒に選んだんだよね?」

そういってカナトくんに渡された小さな袋にはカラフルなくまさんのグミがいっぱい入っていた。

「わぁ…!!可愛い!カナトくんありがとう!…よかったらケーキどう?クラスの子が美味しいって言ってたお店に今日買いに行ったの。」

「へぇそうだったんですね。…じゃあいただきます。」ソファーに座りケーキを食べながら美味しいと笑うカナトくん。そうそう、ハロウィンってこういう感じだよね!


「なぁ、ケーキいらねぇから血くれよ。」

何を思ったのかおもむろにそう言い出し、私の肩に唇を寄せるアヤト。
「なんでよ!ケーキあげたからそういうのはナシ!」

そう言ってソファーから立ち上がろうとするが、時すでに遅し。

プツリと音を立ててアヤト牙は私の肩口に食い込んでいた。

「いいなーアヤトくん。ねぇねぇ、ビッチちゃん?こっちアヤトくんが噛んでるから…」

僕反対側にしてあげるね、そう言って空いている肩へと牙を突き刺すライト。

「いいなぁ…僕もケーキ食べ終わったらそっちの仲間にいれてね?…僕だけダメなんて言わないよね?」

「いや…その…!」

「…明日ちゃんと起きれる程度に加減してあげるって、テディも言ってますよ。だから、ね?」

フォークについたクリームを舐めながらニヤリと笑うカナトくんに私はもう何も言い返せなかった。



(次の日目が覚めたら、ソファーの上で身体中にはたくさんの噛み跡が残っていたけどいつもよりフラフラせずに立ち上がれたから、まぁよしとしよう。)

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テーマ「人外ファンタジー」
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