自覚がないのはふたりだけ



(ユイちゃん視点のお話です)






はじめまして、逆巻家にお世話になっている小森ユイです。最近…スバルくんの様子が変なんです。妙にぼーっとしてたり、イライラしていつもより家を破壊したり、いつもならアヤトくんにキレて喧嘩になるような場面でもおとなしかったり…とにかく変なんです。

「理由だぁ?んなの、俺様が知ってる訳ねぇだろうが?…なんだチチナシ、もしかしてスバルが気になるのか?」

「そうですよ。そんなことどうでもいいことです。僕にも関係ありませんから。」

「んふ。ビッチちゃん教えてあげよっかー?」

登校中の車内で3つ子に私の疑問をぶつけたんですが、返ってきた答えはまぁ…予想通りです。

「ライトくん知ってるの?」

「どうだろうねー?ビッチちゃんが僕に血をくれるって言うのなら教えてあげてもいいけど?」

「…お断りします。」

「冷たいなー多分ねスバルくんにはね…」


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ライトくんの一見ウソっぽい話しが本当じゃないのかと確信に変わったのはそれから2日後の出来事でした。

「スバルくん!」

「…あぁ、さやかかどうしたんだ?」

「あのね…」

廊下の片隅で背伸びをしてスバルくんに話しかける女の子。そしてその子の話を聞くスバルくんの姿はまるで仲のいい恋人のように私の目には映りました。

「んだよ。そういうことかよ…だったら最初からそう言えよな。」

「ごめんね、ちょっと言いづらくて。」
謝る女の子の頭をポンと優しく撫でるスバル君。女の子は気持ちよさそうに目を閉じている。

「今日は大丈夫だから、ねっ?」

「わかった。んじゃとりあえず行くか。」
そういってその女の子とスバルくんは仲良く廊下を歩いて1年の教室の方向へと歩き始めて私の視界から消えました。

「だから言ったでしょー?」

神出鬼没に後ろから現れたライトくんの言葉にただ頷くことしか出来ませんでした。

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そしてその次の日。私は彼女と偶然屋上で会ったのです。

「あっ…」

「あの…先輩ですよね?私に何かご用ですか?」

姿をみて思わず声を上げてしまった私にその子は不思議そうに話しかけてくる。

「えっとスバル君の…」

「スバルくん?…もしかして、スバルくんのお家に居候してる人って先輩なんですか?」

「うん…それで、その…」

「そうだったんですね。あっ私、さやかって言います。」

「私はユイだよ。それでね…」

スバルくんとはどういう関係?そう聞こうとした瞬間、激しい音を立てて開く屋上の扉。

「さやか!!」

「スバルくん?どうしたの?」

「…なんでオマエが一緒にいるんだよ。」

「その、これは偶然で…」

「そうそう。さっき先輩が屋上に来てそれでお話してたの。」

花が開くように柔らかくわらうさやかちゃんに、血相を変えて屋上にきたスバルくん。そして、この状況を見守ることしかできない私。

「…そうなのか?」

「うん。」

「…ったく。心配させんじゃねーよ!勝手にどっか行くなってこの前も言っただろうが!」

「ごめんね。でもあれから先輩に呼び出されたりしてないから大丈夫だよ。」

殺気がばしばし出てるスバルくんに、彼女は何事もないように話す。…この子大物かもしれない。

「あの…」

「…オマエまだいたのか?あぁそうだ。俺とコイツのこと、絶対家で喋んなよ。」

「私がどうかしたの?…先輩また今度ゆっくりお話しましょうね!」

さっきは話しかけてくれて嬉しかったです、とさやかちゃんは笑う。

「分かった。言わないから安心して。…うん、今度ゆっくりまたお話しようね!」

そう言って屋上の扉へと向かう私に笑顔で手をふる彼女と、恥ずかしそうにそっぽを向くスバルくん。

ドアを締めるときに聞こえたのは、スバルくんの「オマエは危なっかしいんだから俺から離れんな」って言う言葉と、あの子の「うん、離れないよ。スバルくん」という声だった。



後日、スバルくんにきいてみたら機嫌悪そうに「付き合ったりはしてねぇ」と、答えてたけどあれはどう見ても…ねぇ


自覚がないのはふたりだけ




「僕も見たけど、あれで付き合ってないんだったらさもし付き合ったらどんな感じなんだろうね?んふ。楽しいなーねぇねぇ、その子ビッチちゃんの友達として家に呼ぼうよ!」

なんてニコニコ笑いながら言うライトくんの言葉を半分聞き流したんだけど、まさかそれがあの3つ子の手によって実現されるとは、その時の私は全く想像していませんでした。



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