ゴルゴダの丘で愛のくちづけを


Heavenシナリオの後っぽい感じです。





重厚感のある音を立てて閉まる木製の厚い扉。ここが始まりで、私の全てだった。一生仕えるつもりだったし、そのことに疑問をもつことすらなかった。
きっとあの頃の私が今の私を見たら、卒倒するだろうな…なんて思うと思わず口元が弧を描く。


「さやか何が面白いんだ?」

「…昔の私が今の私を見たらショックで死んじゃうかもって思うとおかしくて。」

繋がったシュウの手は冷たいけれど、始めて出会ったあの頃よりも暖かく感じる。そんな手をぎゅっと握り締めると、同じように握り返してくれる。


「今までの私を全部捨てたのに、こんなに幸せな気分なんておかしな話だよね。」

「幸せ、か。」

「そう、幸せなの。私が愛を与えるのは神様じゃなくてシュウで、私を愛してくれるのは神様じゃなくてシュウ。こんなに幸せなことはこの世界中を探してもきっとないと思うの。」

「あぁそうだな。【愛】か…そんなもの誰かに貰うことも、与えることも今まで考えたことなかったんだがな。」

「私もだよ。【誰か】を愛したのはシュウあなたがハジメテだもの。」

「…」

答えは返ってこない。だけど隣を歩く彼の表情がいつもよりも少し柔らかいものになる。…多分、私のこの気持を少なからず喜んでくれている。そう思うことにした。


「なぁさやか」
「どうしたの?」

赤い絨毯の上に立ち、月明かりが照らすステンドグラスの光を浴びるシュウはとてもキレイだ。きっとルシフェルってこんな感じだったんじゃないんだろうか?と思ってしまうくらいに。

「オマエはここで全てを返し失った。そして、俺と進むことに決めた。」

「そうだよ。覚醒してヴァンパイアになってもなれなくても、それでも私はシュウあなたと共にあるって決めたの。だから信仰と、今までの生活をここで捨てる。」

「…オマエはいなくなるなよ。」

「大丈夫だよ。心配しないで。私は絶対にいなくなったりしない。たとえこの身が朽ちても―死が2人を分つことがあっても―魂になってもアナタの隣にいる。」

「はっ、魂になってもか…そりゃいいな。」

「本気だから。2人が朽ちてしまってもそれは絶対なの。」

「へぇ…そりゃいい。」

差し込む光に照らされた彼は私の頬を両手で優しく包み唇に小さなキスを落とす。

「決別ついでだ。ニンゲンの真似事でもしてやる…忌々しいがカミサマとやらの前で誓ってやるよ。」


ゴルゴダの丘でのくちづけを



「病める時も健やかなる時も互いを敬い愛し、死が2人を分つまで共に愛しあう事を誓いますか?」

ちょっとだけすまして口にした私の言葉に、シュウは笑い

「ヴァンパイアだから病むことはないし、死が2人を離れさせたとしても…」

それでもさやかを愛すると誓ってやる。と、言い切る。

「私も。魂が消えてしまってもそれでも、きっとあなたを愛し続ける。」

私の答えに満足そうにシュウは笑い再び唇を重ねるのだった。



title by;Amaranth



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