ドン!という激音とともにパラパラと崩れる壁。拳の5センチ横にはさやかの顔があり、その顔は驚きと恐怖と疑問が入り混じったなんとも言えない表情で俺をじっと見つめている。 「…何でって顔してんな。どうして、俺がこういう行動を取ったのか分からねぇって感じだよな?さやか、お前今日何してたかよーく思い出してみろ。」 目の前の彼女は、素直に今日の行動を口にし始める。 「普通に起きて、学校に行って…スバルくんも同じ教室に居たから知ってるよね?…帰る前に、先生に美術準備室の備品を運ぶのを頼まれたからそれを手伝って…今だけど…私何かした?」 どうしてスバルくんがそんなに怒ってるのか分からないよ。と、彼女はおどおどしながら口にする。 「…本当に何もねぇんだな?…じゃあどうしておまえから、レイジの匂いがすんだよ!すげぇ近寄らねぇと、こんなにさやかに匂いが残るはずがねぇ…おい、正直に言えよ。おまえレイジと何したんだ?」 「あぁ…そう言えばさっき会ったよ。それでね、髪の毛に埃が付いてるからって取ってくれたの。女の子がそんな汚れて歩くなんてありえません!って、怒られたんだけど…」 本当にヴァンパイアって香りに敏感なんだね私には全然わからないよと、感心しながら俺を見つめるさやか。くそっ、調子狂う… 「何無防備に他の男に髪なんか触らせてんだよ!…自分で取りますって言ってその場を離れろよな。そんな調子だと、そのうちアヤトのヤローあたりに吸血されちまうぞ!」 よりにもよって、あの兄弟に自分の女を触られるなんて…本気でイラつく。 あいつらは、俺とこいつの関係を知ってる。それを承知の上でワザとやってんのか?と疑問に思っちまう。 「心配してくれてありがとう。…あと、ごめんね。それから、ね。」 私は、スバル以外に血を捧げることは死んでもないから、ね?そこだけは信じて?と、俺の掌に自分のそれを重ねてゆっくりと包み込む。 「…ふん。そんなの当たり前だろ?俺以外にやるくらいなら、俺が全部飲み干してやる。…いきなり怒って悪かった。」 空いた片手で、さやかの髪をそっと撫でると、気持ち良さそうに彼女は目を閉じ俺にぴったりと寄り添う。 「ありがとう、スバルくん。…それとね、」 「愛してる」と君は囁く「んなの、いちいち言わねぇでも俺には分かってんだよ。」 「本当?だったらよかった。」 私はスバルに隠し事なんてないし、きっとできないから。だから、まずは私に聞いて?いろいろ壊してたらスバルの手だってきっと痛いよ?そういって、重なっている手のひらをぎゅっと握り締めるさやかの言葉に俺は頷くことしかできなかった。 (とりあえず、後でレイジのヤツをシメとくか。) (私の行動に嫉妬して、怒りの感情を表してくれる彼が可愛くて仕方がないなんて、口がさけても言えない。) |