「ねぇシュウ。私の世界はあなたなの。私にとって、あなたは全知全能の神で唯一の存在。」 「ヴァンパイアを神ねぇ…さしずめさやかは悪魔に魅入られた異端の民ってところだな。」 ただでさえ眠くて会話なんかしたくないのに、そういう時にかぎってさやかは小難しい話をする。本当にめんどくさい女だ。 「いいね、それ!昔から悪魔崇拝?そんなのもあるんでしょ?」 心底彼女をバカにした発言に関わらず、『シュウ頭いいね!』なんて彼女は無邪気に笑う。 「バカだなお前。異端者は昔から迫害されるって相場は決まってるんだよ。」 虐げられたいのか?周りに拒絶されて、孤立して生きていきたいなんて変わった女だなと、ため息もオマケにつけてやる。 「迫害されようと虐げられようとそこにシュウがいるなら私は構わないわ。」 「…言い切るなよな。マジでお前めんどくさいんだけど。いい加減諦めるって選択肢がねぇのか?」 「ない。何言われても何されても私はあなたの傍を離れる気なんてこれっぽっちもない。」 それくらいなら私ここから飛び降りて死ぬわ。なんて、俺の部屋の窓を勝手に開けて、手摺に腕を掛け笑う。 「本当にバカでめんどくさい女。…だいたいお前死ねないだろ?俺のおかげで、晴れてヴァンパイアの仲間入りしたくせに。」 一時の気まぐれとほんの少しの愛情で、さやかに俺の血を与えたからな。 「そうね。死ねない。ずっとシュウと一緒よ。死ぬ時はぜひその前に私を殺して死んでね。」 窓枠に座り外を眺めながら彼女は足をひらひらさせながら、そんなことを言う。 「嫌だね。死にたきゃそんときゃ自分でやれよ。」 なんなら今突き落としてやろうか?と、背中に手を置いてみる。 「まだダメ。私は悠久の時をシュウと過ごすんだから。」 そうだったな、俺たちは今からただただ時間を浪費しなくてはならない。 限りないそれは、きっと簡単に終わりを告げることはないのだろう。 さやかという暇つぶし相手がいるのは俺にとっては確かに都合はいいことではある。 「それでお前は何をしたい?」 ほら言ってみろよ。 acedia とりあえずは…それからいろいろ考えるの。 シュウが隣にいればなんでもいいんだけど、ね。 なんて楽しそうに笑いながらひらりと床に舞い降り、ベッドへと軽やかに彼女は足を運ぶ。 「そうかよ。本当にめんどくさい女。」 でも、この面倒な女が好きな俺が一番面倒だ。 さぁ、とりあえず眠ろうか。 起きるのはいつでもいい。 俺とお前の気が向いたら、その時が目覚めの時間。 永遠とも言える時間があるんだから、少しくらいの寝坊なんて問題ないわよ。 だからおやすみ。 (今がいつとか、明日がどうとかどうでもいい。ただ隣に彼がいればそれだけで。) |